オーストラリアの教育システムは、南半球の国ということで他の欧米諸国とは違う独自のスタイルを持っている。各州ごとに多少違いはあるものの、義務教育がYear1からYear10(日本の小学1年〜高校1年まで)までというのは各州共通である。
教育機関は全て2月を始まりとして1年間を4つの学期に分け、授業が進められていく。学年末は12月の半ばで、その後長いクリスマスホリデー(夏休み)に突入し、1月末まで続く。夏と冬が逆転している南半球ならではのシステムである。
(1)初等教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Year 1からYear6までの日本の小学校と同じ6年間のシステムである。
学校によって授業の組み方は違うが、基本的には日本の小学校と大差なく国語(英語)、算数、理科、社会、体育、音楽、図工などで構成されている。時間割はあるものの、各教科の授業がその教科の時間帯に行われるとは限らないというのが非常におもしろい。また、教科書も決められたものを個人が持つことはなく、ノートだけが支給される。
例えば「テレビのコマーシャルを見てきなさい」という課題が出されたとする。次の日の授業では、何のためにコマーシャルがあって、どうやって作られ、何人の人が関わって予算はいくらで、利益は、一人の収入はいくら…・・というふうに計算もする。ひとつの授業の中で社会と算数が混ざっているわけである。また、「海の生物」というのがテーマだったとすると、まず実際に海に出掛けることになる。貝殻を拾ったり海藻を採ったりして学校へ戻る。次に海の絵や魚の絵を描き、ストーリーや詩を作る。そして生態の勉強をした後、海の汚染、さらにはゴミ処理の問題にまで発展させていく。理科と図工、国語と社会が一緒になった授業というわけである。
これは教育に関する考え方が日本とは違い、社会に役立つ実践的なことを考えることに重点を置いているといえる。社会はさまざまなことがつながっていて、今学んでいることは区切って成り立たないという考え方が徹底しているため、小学生と話をしても社会のしくみをよく知っていて驚かされる。
また、宿題も5年生ぐらいまではほとんど出されない。夏休みなどの長い休みのときでも、日本のような莫大な宿題というのは皆無である。ただし、学校の授業だけではわからないことや知りたいことがあると、放課後、図書館に行って勉強するこどもがけっこういて、すべて子どもの自主性に任されているといった感じである。
(2)中等教育(中・高校)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一般的に、ハイスクールと呼ばれているが、ちょうど日本の中学校と高校を合わせた形態である。ハイスクールへ進学する際は、一部の例外はあるものの、公立校の場合は無試験で地元の学校へ進学でき、越境入学も4校までなら入学申請が可能である。私立校の場合は、たいてい、新学期の1年前には入学申請をしておく必要があるが、中には出生時に申請しなければ空きが無い学校や、逆に新学期の2ヶ月前でも空きがあり申請できる学校もある。入試はレベルの高い学校では課すところが多く、そうでないところは面接と小学校の成績により選考が行われる。
◆Year 7(7学年)〜 Year 10(10学年)
この期間は義務教育で、主要学習分野は以下のとおりである。@ 英語、 A 数学、 B科学、C人間社会と環境、D創造芸術、E人格育成・保健・体育、F外国語
、G技術と応用。
このうち@〜Cが必修科目で、ほかの分野はそれぞれの分野で選択するが、選択できる科目は公立・私立を問わず学校により異なる。履修した科目が難しかったり、やさしかったりすると、その科目だけ学年を下げたり上げたりすることもできる。
Year 10を終了すると、それまでの学業成績と必修科目のテストの結果により、義務教育終了証書が授与される。
◆Year 11(11学年)〜 Year 12(12学年)
この期間は高等教育機関に進学する生徒のためのコースであり、特に大学に進学する生徒はHSC High School Certificate(高等学校終了証書および大学入学資格)の共通テスト(大学入試を兼ねる)を受けなければならない。このようなこのような背景から、カリキュラムもHSC科目といわれる大学受験のための必須科目があり、内容的にもかなり難しくなる。また、大学の一般教養もこの時期に学習することになり、法律、経営、工学、観光学などの科目も学べる。HSCに関しては、就職においてもその取得を条件とする会社が多いことからも、重要なものであるといえよう。
また、Work Experience(就業体験)というシステムが通常、Year 10でカリキュラムに組まれている。州によって異なる場合があるが、生徒に就業希望先を3〜4つ出させて学校が手配し、2週間の期間、就業先の企業で無給で働きレポートを学校に提出する。この制度は、ハイスクール卒業後、大学進学を目指す生徒にとっても専攻や将来の就職を決めるのに役立つ制度である。
(3)高等教育機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本は学歴社会といわれるが、オーストラリアは資格社会である。職業に就く際は、特に一般企業の場合、高等教育機関で取得した学位・資格が物をいい、待遇・昇進の交渉や転職する際に、実際の能力が伴わなくても効力を発揮してしまうことが多々ある。大学の名前以上に、どの分野でどの程度の学位・資格を取得したかが重視されるのである。したがって、社会人になってからでもパートタイムコースに通って学位・資格を取得する人が多い。
高等教育機関は以下の3つに大別される。
@ 総合大学(大学院)カレッジ
ATAFE(Technical And Further Education)
B 専門学校、ビジネスカレッジ
◆総合大学・カレッジ
総合大学が、文科系、理工系、芸術系など、幅広く学問分野を網羅しているのに対して、カレッジは教育や農業、海洋、映像メディアというように一定分野に限定している。さらに、カレッジは、総合大学よりも実践的でTAFEよりも学問的にレベルの高い教育プログラムを提供している。最近カレッジは総合大学に吸収されたり、他のカレッジと合併して新たなる総合大学を形成している。
大学のコースは、基本的には、学部と大学院課程に分けられる。学部課程は講義やゼミなど理論学習を中心に進められ、Bachelor(3〜8年)と実践重視のDiploma系(2〜4年)のコースがある。
大学院課程はMaster(1〜2年)とDoctoral(2〜4年)のコースがある。また、学部課程と大学院課程の間にGraduate
CertificateやGraduate Diplomaのコースがあり、よりレベルの高い資格を取得するためのコースとして、さらに学科によっては大学院課程に進学する際に必修コースとして位置づけられている。
学科と専攻は、人文、社会、教育、科学、数学、コンピュータ、芸術、健康科学、経営、経済、法律、建築、建設、環境、工業、農業などの各分野にわたり細分化されている。日本の大学にはなかったり、あっても主流でない学科の中には、環境学や観光・接客学のように日本のみならず世界的にも脚光を浴びているものがあり、日本で学ぶ以上のものが得られ希少価値が高い。
◆TAFE(Technical And Further Education)
@教育課程
TAFEは州立の職業訓練専門学校で、各州の主だった町には必ず存在する。基本的に、TAFEは各地域の産業に従事する人間を育成することを目的に設立されているので、各校の特色は地元で盛んな、または、発展させようとしている産業に関連のある学科に現れるといってもよい。コースは、技術や技能の修得を目的とするCertificateT〜W(数ヶ月〜2年)と技術や技能の修得だけでなく大学のような理論学習もおこなうDiploma(2〜4年)、
Advanced Diploma(18ヶ月〜2年)に大別される。後者は高等教育レベルのコースで、修了者は大学への編入も認められる。
A 学科と専攻
TAFEはその特性から扱っている学科は多岐に渡る。芸術・メディア・事務一般、建築・建設、ビジネス全般(金融、保険、会計、マーケティング、広告、中小企業経営、小売り、卸売、秘書、不動産ほか)、エンジニアリング、情報工学、製造、公共サービス(医療、福祉、看護、健康、レクリエーション、スポーツ、美容、理容)、採掘、旅行・観光、運輸など、あらゆる産業の専門分野に関してスペシャリストとしての技能や技術が身につけられる。同じ学科の中でも、高度の技術・技能や理解を要する専攻は就学期間が長くなり、コースも高等教育レベルのものになる。また、同じ専攻でも、フルタイムだけでなく、期間は長くなるが、パートタイムのコースを設けている場合があり、これは社会人の受講生を意識した措置でもある。
B 入学基準と方法
現地の高校に通っている師弟の場合は、高等教育レベルのコースへの入学であれば、 Year 12を終了していることが条件で合否の判定は書類審査(専攻によっては作品提出や技能面談がある)。また、日本の高卒以上の学歴保有者は、英語力と、入学を希望する学科に関する職歴または基礎科目の成績が審査の対象になる
。
◆専門学校・ビジネスカレッジ
私立の専門学校は、そのコース内容や履修期間、取得できる資格に関する限り、TAFEと大筋において変わらない。では、地元の学生がどちらを選ぶかというと、コース内容や取得できる資格が同じであれば授業料がかからないことからTAFEであり、専門学校のなかには海外にもその名が広く知られているようなところもあり、コースの内容がTAFEよりも優れていたり、自分が希望するコースがTAFEに無いような場合は専門学校を選ぶ。ただし、専門学校を選ぶ際には気を付けなければならないこともあり、学校によっては、高等教育レベルとして認定されていない資格にもDiplomaなどの名称を付けているところもある。
学科と専攻は、TAFEと比べて一校が網羅する学科の範囲は狭く、一定分野に関して細かく専攻科目が分かれている。デザイン、航空、ビジネス、秘書、コンピュータ、旅行、観光・接客、演劇・映像、農業、エンジニアリングなど、いずれも間連業界・企業との結びつきが強く、これらのニーズを直接的に取り入れたプログラム内容になっている。
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